記帳代行の検収に要注意!検収業務のやり方3つのステップ
記帳代行に依頼した後は、必ず検収作業をおこないましょう。
万が一ミスや抜け・漏れがあっても早期に気づくことができるため、修正してもらいやすくなります。
軽微なミスであれば自社で直すこともでき、自社の経営状態を正確に知ることができるでしょう。
今回は、記帳代行を利用したあとにおこなう検収業務について解説します。
検収をなるべく楽にするための方法にも触れますので、「細かく全データを突き合わせている余裕がない!」という企業はぜひ参考にしてみましょう。
記帳業務の検収方法
まずは、記帳業務の検収方法を紹介します。
基本的にはチェックリストに沿って作業することになるため、あらかじめ自社オリジナルのチェックリストを作成しておくことが大切です。
チェックリストを作成する
前述の通り、まずは検収作業に用いるチェックリストを作成します。
納品物ができあがってからリストを作成していると時間が限られてしまうため、事前に作成しておくとよいでしょう。
代表的な項目として、下記が挙げられます。
・現預金の残高
・売掛金の残高と消込状況
・買掛金の残高と消込状況
・クレジットカードの利用内容
・固定資産台帳の登録内容
・在庫棚卸の登録内容
・試算表(PL/BS)
・未解決コメント
・月締め
それぞれの帳票と作成されたデータの内容が合致しているか、調べるために使います。
チェックリストが整っていれば記帳代行を使わず自社で内製化した場合にも役立つため、利用の有無に関わらず作成しておくことをおすすめします。
リストに沿って検収作業をする
上記で作成したチェックリストに沿って、検収作業を進めます。
合致していない部分があればピックアップし、後で内容を確認してみましょう。
特に、下記のような内容は注意すべきポイントです。ひとつの指標として、覚えておきましょう。
毎月定額で発生する金額
事務所の家賃・複合機のリース料・ソフトウェアの使用料・役員報酬など、毎月定額で発生する金額は要チェックです。
月次推移表(損益計算書)で毎月定額の記帳になっていなければ、ミスが疑われるでしょう。
特定の月だけ金額が異なるときや、記帳がなく0円になっていたりする場合は細かくチェックした方がよさそうです。
突発的に生じている勘定科目
特定の月だけ突発的に生じている勘定科目があれば、勘定科目の登録を間違えているかもしれません。
例えば毎月「給与」として登録している金額が、その月だけ「雑給」になっている場合、「雑給」の勘定科目が突然現れて違和感を覚えることがあるでしょう。
通常であればどの勘定科目で登録しているかをチェックしながら、修正する必要があります。
関連する勘定科目との関連性が不明な項目
単発の勘定科目だけでなく、関連する勘定科目との差もチェックすることがおすすめです。
例えば売上は毎月上がっているのに仕入額がどんどん下がっている場合、仕入れに関する計上漏れが生じているかもしれません。
同様に、仕入高が上がっているのに単価が上がっているなど、不自然な項目がないかチェックしてみましょう。
マイナス残高になっている項目
試算表上でマイナス残高となっている場合、記帳上のミスがあるかもしれません。
1年間の累計取引が赤字にならない限りマイナス残高になることは考えられないため、心当たりがないときは厳密にチェックした方がよいでしょう。
補助科目を間違っていたり、貸借を逆に記載してしまっていたり、ヒューマンエラーによるものが多いです。
残高が増え続けている(減り続けている)項目
残高が増え続けている場合、二重記帳となっている場合があります。
反対に、残高が減り続けている場合は記帳漏れが疑われるため、念のためチェックしておいた方がよいでしょう。
特に、給与未払い金など毎月同程度の残額になることが想定されている項目であるにも関わらず、増え続けている(減り続けている)という場合は要注意です。
残高に動きがない項目
日常的に入出金があるはずの口座であるにも関わらず、残高に動きが一切見られない場合も注意が必要です。
記帳漏れなど記帳代行側のミスが疑われるケースや、取引が正常に推移していないなど自社側の課題が見えてくるケースがあります。
ただし、資本金など設立時から変わらなくても不自然でない項目もあるため、実態に合わせてチェックしてみることが大切です。
必要に応じて修正依頼を出す(もしくは検収合格を出す)
納品されたデータに問題があれば、必要に応じて修正依頼を出しましょう。
ほとんどの記帳代行業者はダブルチェック・トリプルチェックをおこなっているため大きなミスがないと想定されますが、気づいた点があれば遠慮せず伝えて問題ありません。
特に気づいた点がなければ検収合格を出し、支払いに進みます。
検収作業が大変だと感じる理由
次に、多くの経理担当者が検収作業を負担に感じる理由を紹介します。
一見データを突き合わせるだけの作業に見えますが、なるべく効率化した方がよいとされている理由を探っていきましょう。
大量のデータを突き合わせるため手間がかかる
検収作業を漏れなくおこなうためには、大量のデータと証憑書類の突き合わせが必要です。
細かな数字を1点1点確認していくのは骨が折れる作業であり、「面倒くさい」と感じてしまう人も多いでしょう。
結果として検収を完了しないまま検収合格を出してしまい、本来の記帳が果たすべき役割を全うできないケースも発生しています。
まずはデータを1点ずつ確認しなくても済むよう、チェックリストなどを設けて作業していくことが肝心です。
真面目に検収作業をしようと思っていても、記入漏れやズレに100%気づけないケースもあります。
特に経理知識の浅い人や記帳業務に詳しくない人が検収を担当する場合、どこをどうチェックすればいいか分からないこともあるでしょう。
あらかじめチェックリストができていたりマニュアルがあったりする場合は検収しやすくなりますが、環境が整っていないと見逃しも多くなってしまいます。
最終的に責任者とされるのは検収を担当した人であり、「よく分からないのに責任ばかり負わされる」という不満につながりかねません。
記帳代行を使って業務負担を軽減したつもりが、思ったような効果を得られないまま終わってしまうことも想定し、万全の検収体制を作っておきましょう。
検収後は修正依頼ができないため責任が重い
基本的に、検収期間が過ぎた後や検収を完了した後は、記帳代行に修正依頼を出すことができません。
深刻なミスを見逃してしまった場合の責任が重く、「大変だ」と感じる原因となっています。
自社側でも複数人で検収を担当して負担を分散化させたり、そもそも検収の手間がかからないようなクオリティ重視の記帳代行を選定したりしながら、対策していくとよいでしょう。
なかには納品から2週間以内など期限を設けたうえで、無償による修正をしてくれる記帳代行も存在します。
安心材料のひとつとして、このような業者を選定しておくこともポイントです。
記帳代行の検収を楽にする方法
最後に、記帳代行の検収を楽にする方法を紹介します。
検収に時間がかかって思うような業務軽減にならなかった、というミスマッチを防ぐためにも、対策しておきましょう。
検収期間を長めに設けておく
検収期間は長めに設けておき、スケジュールに余裕を持つことが重要です。
短期間のうちに一気に検収をすることもできますが、ミス・抜け・漏れに気づけないことも多く、流れ作業のようなチェック体制になりかねません。
記帳代行業者にいつまでの検収が必要か事前にリサーチし、無理のない業務スケジュールを立てられるよう対策しておきましょう。
検収に必要な人員を確保しておく
記帳に割く人員が減らせた分、検収に割く人員だけでも確保しておいた方がよいでしょう。
納品されるタイミングを見ながら業務を調整しておけば、慌てて検収作業をすることもなくなります。
検収には記帳に関する知識のある人を指名し、問題なく業務が遂行されているかチェックしてもらうのが理想です。
チェック体制が整っている記帳代行業者を利用する
そもそもミスが発生しないよう、チェック体制が整っている記帳代行業者を選定することがポイントです。
例えば、ダブルチェックだけでなく人の目によるトリプルチェックを手掛けている業者であれば、万が一ミスが発覚しても修正したうえで納品してもらうことができるでしょう。
作業者本人・現場の管理監督者・納品責任者など全く異なる人がひとつの案件に携わってチェックしている業者であれば、ミスを最大限減らしやすくなります。
ミス予防のための取り組みは記帳代行業者により大幅に異なるため、依頼前に確認しておくことをおすすめします。
経理知識が豊富な人員がいるか事前に確認する
記帳業務は経理や簿記に関する知識が必要なため、経験の浅い人や未経験者が担当するとどうしてもミスが多くなりがちです。
そのため、依頼先である記帳代行業者にどの程度経験のある人員がいるか、事前に確認しておくとよいでしょう。
資格保有者・経理部における実務経験者などが多数在籍している場合、おのずとクオリティも上がります。
納品形態やフォーマットをあらかじめ指定しておく
あらかじめ納品形態や作業フォーマットを指定し、そこに追記してもらうような形式で作業してもらうことで検収の手間を大幅に削減できます。
普段自社で使っているのと同じフォーマットを使ってもらえれば、検収担当者にかかる負荷も軽減できるでしょう。
フォーマットの用意がない場合、契約前に記帳代行業者と細かく打ち合わせしておくことをおすすめします。
なかには入力内容や記入項目を定めて1案件ごとに作業仕様書を作り込んでくれる業者もあるため、はじめて記帳代行を使う企業にとっても頼もしい存在となるでしょう。
一度フォーマットを作ってしまえばその後も使えるため、最初は多少時間をかけてでも作成しておくことがポイントです。
記帳代行の取引実績をチェックしておく
記帳代行業者の取引実績をチェックし、他企業からの信頼を探っておくことも効果的です。
ミスが多い記帳代行であれば、一度の取引で終了となることが多いでしょう。
反対にミスがなく手厚いサポートが期待できる記帳代行であれば、繰り返し定期的な依頼を受けたり大企業からの発注を受けたりすることが多くなります。
過去の取引実績や同業他社の利用状況を教えてもらえば、業者の信頼性が少し分かります。
ひとつの参考情報として調べ、業者選定の助けとしていきましょう。
RPAやAIを使って自動検収できるシステムを作っておく
RPA(=Robotic Process Automation)やAIによるシステムを構築し、検収作業を半自動化する方法です。
必要な情報さえ揃っていれば、異常が感知できる部分にのみアラートを出してもらうことができるため、なかには記帳業務自体をシステム化している企業も少なくありません。
経理知識のない人でも検収作業ができるようになり、非常に効率的だと言えるでしょう。
しかし、自社の運営実態に合わせたRPAを組むことは至難の業です。
開発会社などの力を借りることが前提となるため、ある程度のコストは見込んでおく必要があるでしょう。
長期的な目で見て記帳業務の自動化を図りたい場合にのみ検討し、検収も含めて作業できる環境を用意していくことがおすすめです。
まとめ
記帳代行は自社の業務負担軽減やコスト削減を叶える存在でありながら、その後の検収作業を面倒に感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、検収用のチェックリストを作成したり検収に必要なスケジュール・人員を十分に確保したり対策することで、負担は大幅に軽減することが可能です。
特に下記のような項目については、見逃しのないようチェックしておきましょう。
・ 毎月定額で発生する金額
・ 突発的に生じている勘定科目
・ 関連する勘定科目との関連性が不明な項目
・ マイナス残高になっている項目
・ 残高が増え続けている(減り続けている)項目
・ 残高に動きがない項目
必要に応じて修正依頼を出し、決算や納税申告のときにズレが出ないようにすることが大切です。