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病院・クリニックの医療法人としての特殊性を踏まえた会計・経理の記帳代行への依頼の仕方

病院、クリニックはその公共性の高さから中々意識しづらい部分もありますが、突き詰めれば一つの事業体、法人です。つまりそれは、病院・クリニック(歯科医院も含みます)にも納税の義務が当然あることを意味しています。

ただ公共性が高いという点と、健康保険の適用など公共福祉サービスとの密接な関係、繋がりがあることから、かなり特殊な位置付けの法人と言えます。

今回は、その特殊性についてまずしっかりと把握した上で、病院・クリニック(もしくは歯科医院)が経理の記帳代行を依頼するときの注意点などを考えます。

病院・クリニックの公共性

まず、病院・クリニックが他の法人と異なる根拠を考えます。

一言で言えば、「病院・クリニックの公共性を維持する為」という一言に尽きます。医療法人と呼ばれる病院・クリニックが一般法人と比較してかなり特殊にしている大きな要因の一つです。少し要約し過ぎているので、もう少し詳説します。

医療サービスというものは、人命に直結するサービスを提供するため、従事する人たちに高い倫理観と道徳観が要求されるのはすぐに理解できるかと思います。実際多くの医療従事者は、これを実践してきました。だからこそ古今東西、医療従事者は尊敬される職業であり続けています。

ただ一方で、残念ながら尊敬できる人ばかりでは無いのが世の常です。病気や怪我をしている人の足元を見るような、時代劇なんかでよく取り入られる行為を防ぐには、医療従事者の個人的な倫理観だけに依存していては近代的な社会は築けません。

シンプルな話で、医療従事者が仮に倫理観なしに利益追求を訴求する人だけだった場合、治療費が簡単に暴騰してしまいます。人命に関わるような状態は金銭的な損得勘定を簡単に凌駕してしまいます。また情報の非対称性、つまりどこの何が悪いのかが分かる医療従事者と知識の無い患者というギャップも治療費高騰の要因になり得ます。

こういった好ましく無い状況を悪用するかどうかは、その場にいる医療従事者の裁量次第ということになるわけです。つまり仮に何も制約がなければ儲けようと思えば幾らでも設けられてしまうということです。何かしら国家的な制約、規範が必要になってくることは論を俟たないでしょう。

そういった試行錯誤の中で生まれてきた考え方が、『医療行為を非営利を原則とする』という考え方です。日本をはじめ近代国家としては、この考え方が医療サービスの根幹にあります。具体的には、法律でしっかりと規定されています。日本では、医療法という法律で規定されています。

健康保険の仕組み

もう一つ医療法人において考えなければならない特殊性があります。それは健康保険の仕組みです。

医療行為は医療従事者の裁量次第で暴騰してしまう危険性があると前述しましたが、そもそも医療行為、もしくは医療行為に必要な機材や、医薬品というものは相対的に高いものになります。医学部で人材を育てるのも相当コストが高いのは医学部の学費を考えれば容易に想像できます。また人命に関わる機材や体に直接作用する薬を開発するには、膨大なコストと時間が掛かりそうなことは簡単に理解できるかと思います。

つまり医療従事者の方々がいかに高潔な人物であったとしても、前提として高額なサービスになってしまうことは免れない部分はある程度どうしてもあるわけです。この高額のコストを出来るだけ低く抑えるために考えられたサービスが「保険」です。

一般に病気や怪我になるのは、「時折」です。常に病気や怪我になるわけではありません。この点に注目し、病気になった時に予め備え、お金を備蓄しておけばもしもの時の高額な治療費という急な出費の備えになり得ます。ただ時折とは言え、備えが整わないうちに連続で病気になる可能性はどうしても0にはできません。

もう少し万全に備えるためにはもう一工夫必要です。そこで考えだされたのが、グループで備えるという考え方です。ある程度の規模の人数で同時に備えることができると、金額の規模が飛躍的に多くなり、連続した治療費の出費にも耐えられるようになります。あとはそのグループの中で病気が発生する確率と頻度で、個々に定期的に備える金額、つまり保険料が決まるわけです。

保険会社などの民間が提供している生命保険やがん保険も基本的にはこの考え方で構成されて提供されています。

ただこの保険の考え方である程度カバーできるようなったとは言え、まだ貧富の差によるサービス格差の可能性は小さくなりません。より広範なグループでこの保険の考え方を適用する必要があります。

それが国民皆保険という考え方で、主に国家が主導することによって、全国民に加入を義務付けることで医療サービスの支払いに備えるものです。これが、いわゆる「健康保険」と呼ばれるものです。

日本では国民皆保険がある

我々が住む日本国にももちろん、健康保険の加入義務があり、全ての国民が基本的には健康保険に入っています。

日本に日本人として暮らしていると、病院に行くとき必ず健康保険証を持っていくので、保険非適用の価格というのはほぼ意識することは無いですが、簡単な診察と検査だけでも実は結構な金額を支払っています。『3割負担』というのをお聞きになったことがあるかもしれませんが、病院で支払っている料金というのは、実は3割分しか払っていないということです。つまり、

[実際に払った金額]÷ 0.3 = [本当の医療費]

ということです。これには薬代は含まれないので、薬も必要な場合はもっと金額が大きくなります。ちなみに薬も病院が発行する処方箋に基づいて出される薬については保険が適用されています。病院の帰りに調剤薬局で薬を購入した場合は、ドラッグストアで購入した薬の値段とだいぶ安く買っているはずです。

もし健康保険などの公共福祉サービスが存在しなかったら

国民健康保険が無かったら、どうなるんでしょうか。答えは簡単です。保険非適用の価格を支払う必要が出てきます。つまり結構な高額な料金になってしまいます。

さらに国民健康保険が無い状態を仮定して考えてみましょう。まず金額が高いので、病院から足が遠くなります。つまり気軽に病院に行けなくなるので、国民の健康度合いが相対的に低くなっていきます。また金額が高いことから裕福な人は適切な医療行為を受けられる一方で、低所得の人は受けられないというサービス受益の度合いに大きな差が出てきます。これは突き詰めていくと、寿命の差という形で如実に現れてきます。それだけではなくもっと無形なところ、例えば生活の質でも大きさな差が出るはずです。健康で朗らかに日常を過ごせるか、毎日咳き込みながら暮らすかでは大きな差があると言えます。

このような制度の不備に見える状態は、一部の発展途上国の話だろうと思うかもしれませんが、実は先進国と呼ばれる国での反例が存在します。それはアメリカです。世界の大国と言っていいアメリカには、意外なことに国民健康保険の制度が存在しません。

ではアメリカでは、どうしているのでしょうか。先に結論だけを言ってしまうと、「任意保険でカバーしている」というのが答えです。つまり民間の保険会社が提供する個人向けの保険、もしくは会社が加入している団体保険に加入して、もしもの時に備えています。

任意保険でカバーできているなら問題ないじゃ無いかと思うかもしれませんが、日本でも保険料を国民健康保険や厚生年金保険料とは別に払っていると、入り方にもよりますが、結構バカにならない金額になります。つまり日本のように国民皆保険が無いと、貧富の差の影響が出やすくなります。その辺りの話は有名なアメリカの医療ドラマなどででよく取り上げられるテーマですので、興味があればご覧になってみるとよいでしょう。

健康保険と非営利性の両立

アメリカの例でも分かるように保険の仕組みだけでは、医療費の高騰を防ぎきれず社会不安を生みやすくなります。よりよく健康保険を運用するためには、健康保険の考え方の中にも医療の非営利性を実現させる必要性があります。

日本ではそれを実現するために、各医療行為それぞれに細かく価格(保険点数)が定められるようになっており、基本的な医療サービスの内容が同じであれば、基本的にどの病院に掛かっても同じ価格になるような仕組みになっています。この価格の厳密な価格設定が医療法人の経理・会計を特殊にする要因になっています。

医療法人の経理や会計の実際

医療法人の非営利性と健康保険の厳格な運用ルールに由来する経理の特殊性を見ていきます。

保険診療報酬

まず収入源という観点から考えます。医療法人の主な収入源の一つが「保険診療報酬」です。いわゆるレセプトと呼ばれるもので、一般法人には無いものと言って良いでしょう。前述した通り厳格に定められているので、ルールに則ってさえいればそれほど難しいものでは無いですが、かなり詳細にルール(点数)が定められているものですので、その点は運用上注意しなければなりません。

また診療報酬は請求時から2ヶ月遅れて振り込まれます。計上のタイミングなどには注意が必要になります。

消費税の扱い

主要な収入源である保険診療報酬は非課税なのであまり意識する必要はありませんが、自費診療の割合が大きい場合や、健康診断や予防接種の実施規模によっては課税事業者になりえます。介護関係についても注意が必要です。

医療法人運営管理指導要項

一般法人とは異なり、医療法の関連法規の理解が必要になってくるのはもちろんのこと、「医療法人運営管理指導要項」などの厚生労働省から発せられる通達や通知の理解も非常に重要になってきます。

剰余金の取り扱い

非営利が原則なので、剰余金の配当は法律で禁止されています。これは形式的には剰余金の配当では無いものの、実質的な利益配当に該当する場合も禁止されています。簡単に纏めると、役員やMS法人などとの取引について、実質的な配当とされる取引については行うことができません。具体的には以下のような行為を指します。

1. 役員等へ金銭などを貸し付け

2.役員やMS法人への過大な賃借料の支払い

3.医業収入に応じた定率の賃料を支払う

4.役員等に対して過大な報酬または退職金を支払うこと

5.役員等の債務の引き受け、債務保証

基本財産にくり入れ、もしくは積立金として積み立てていくような処理が必要になっていきます。

概算経費の特例

社会保険診療報酬が年間で5,000万円を超えない場合、実際に支払った経費ではなく、売上に概算経費率を乗ずることで算出した金額により所得を出すことが出来る特例です。概算経費率の詳細などの詳細は割愛しますが、実際にかかった経費に比べて低く所得が算出される可能性もあります。節税効果の高い制度ですが、しっかりと比較をして使用するかは判断する必要があります。

まとめ

最後にまとめです。

社会の安定ということを考えた時に、欠かせない要素である健康福祉の維持、向上という意味で、医療サービスの拡充は欠かせません。ただ高潔な精神と倫理観を持って運用したとしても、医療サービス自体の高コスト体質は中々解消できません。またパンデミックのような状況では、どんなに気をつけていても病気になる確率は自然と高まってしまい個々の家計への影響は甚大になってしまいます。社会インフラとしての医療サービスの費用低減の方策は必須です。

そのことからまず、基本的に医療サービスが高騰しないよう、医療法人の営利活動を制限することは社会的要請と言えます。

健康保険についても、支払いをする観点から見て費用低減を実現するためには不可欠な要素で、社会の公平性の維持と安定化への寄与という観点で見ると、その存在の大きさは計り知れないと言っていいでしょう。アメリカの例を見ても健康保険がない状況というのは正直なところ考えたくもありません。

以上のことから医療法人に対する取り扱いについては、様々な面で一般法人と比べて特殊性を持つことになります。何よりも法人活動の血液とも言える資金の流れを扱う、会計や経理、経理の記帳も注意すべき点が多くあり、法人として必要な経理や会計も特殊にならざるを得ません。

経理の記帳方法も医療法人ならではの部分はありますので、その部分にきちんと対応した記帳代行サービスを選定していく必要があります。