ワークライフバランスや働き方の見直しが注目されている昨今、ルーティンワークをDX化し、より生産的な業務をするための取り組みが不可欠になっています。
経理業務からDX化を推進する企業も多く、記帳業務を外注し、負担軽減や業務効率を狙うことも増えてきました。
しかし、記帳業務を税理士以外に委託することに対し、不安を抱える企業も多いのではないでしょうか。
今回は税理士以外に記帳代行を依頼する違法性について解説するとともに、より効果的な依頼手法を探っていきましょう。
結論からお伝えすると、税理士以外に記帳代行を依頼しても違法ではありません。
記帳は預金通帳・請求書・領収書などの書類から必要な経理情報をピックアップして書類上に転記する業務であり、自社社員はもちろん、簿記などの資格がない人でも担当可能です。
そのため、経理関連の実務経験が豊富な人やフリーランスでも、記帳代行をすることができます。
もちろん、税理士や公認会計士など士業資格を保有している人でも問題ありません。
記帳代行は税理士以外に依頼しても問題ありませんが、税理士しか担当できない「税理士独占業務」があることに注意が必要です。
税理士の資格がないのに下記業務を請け負ってしまうと違法になるため、外注する側も請け負う側もあらかじめ注意しておきましょう。
税務代理業務とは、その名の通り税務業務を代行する仕事を指します。
例えば税務署に税金を申告して税金の納付をおこなうことや、税務署からの調査・処分があったときに主張や陳述をおこなうことが挙げられます。
また、パソコンやe-Govを経由してオンライン申請することも、税理士以外に外注することはできません。
例え知り合いや親戚であったとしても、自社社員ではない外部の人に税務代理業務を委託することはできませんので、あらかじめ知っておきましょう。
税務書類の作成代行業務とは、税務署に税金を申告する際に作成する書類を作成する仕事を指します。
申告書・届出書・申請書類など公的に必要な書類の一切がここに含まれるため、公的機関へ提出する書類の作成を外注するときは特に慎重になった方がよいでしょう。
フリーランスや個人事業主における確定申告書の作成代行も、違反に当たります。
これらの業務を外注したい場合には税理士事務所もしくは税理士資格を持つフリーランスを選定し、違反に当たらないよう対策しておくことが不可欠です。
税務相談業務とは、税金や税務に関する相談事項の一切を引き受ける仕事を指します。
税金申告のやり方・税務署から調査や処分をうけたときの陳述内容などは、実務だけでなく相談を受けることも税理士独占業務であると知っておきましょう。
また、納税額の計算・納税手続きに関するアドバイス・節税対策なども税務相談業務に含まれます。
知人同士で一般的な情報交換をするのみであれば問題ありませんが、金銭や報酬が発生して請け負う場合は税理士資格が必須です。
ここでは、税理士に記帳代行を依頼するメリットを解説します。
複数ある依頼先の中でも特に税理士に依頼するメリットをピックアップしていますので、参考にしてみましょう。
入出金の記録・領収書・預貯金の通帳のコピーなどを提出するだけで、損益計算書・貸借対照表・総勘定元帳・仕訳日記帳などをトータルで作成してくれることが大きなメリットです。
記帳代行を依頼するために入金・出金・振替伝票をデータに起こす必要がなく、ほぼ丸投げに近い状態で依頼することができるでしょう。
その分煩雑な経理作業から解放されやすくなり、経理部社員が本業に集中しやすくなります。
社長や役員がこれまで記帳を担当していた場合のメリットは更に大きく、直接売上につながるような積極的な営業活動に本腰を入れやすくなる効果も期待できます。
記帳業務をほぼ全て委託したい場合には、税理士事務所に依頼するのがおすすめです。
税理士事務所として法人化している業者であれば、税理士としての豊富な経験やノウハウを期待できます。
地域に根差した税理士事務所や、記帳代行に強みを持つ税理士事務所であれば、更に依頼しやすくなるでしょう。
また、クライアントの秘密を守れるよう徹底している事務所が多く、専従スタッフのみを雇用しているケースや社外への情報持ち出しを一切禁止しているケースもあります。
スタッフ教育の質も高く、税理士資格を持たない人でも税理士の管理・監督のもとで業務に当たっているため、ミスや抜け・漏れも少ないでしょう。
高い専門性を期待してエキスパートを探している人におすすめの依頼先です。
税理士は、記帳代行だけでなく税理士独占業務を担当することができます。
税務代理業務・税務書類の作成代行業務・税務相談業務など、税理士独占業務も一貫して頼みたい場合には、税理士事務所と契約するのがよいでしょう。
特に、ひとり社長で経営していて税務知識があまりない場合や、自社で経理専門担当者を雇う余裕がない場合におすすめです。
また、「税金関係の手続きが煩雑すぎてよく分からない」など、既に悩みを抱えている場合にも活用の道が多くなるでしょう。
自社が今抱えている課題に合わせて依頼先を選定し、高いパフォーマンスを期待するのがポイントだと分かります。
反対に、税理士に記帳代行を依頼するデメリットを紹介します。
メリットだけでなくデメリットも正しく認識しながら、契約後に後悔することを防いでいきましょう。
税理士は、税務に関する専門知識を有し、税理士法に定められた国家資格をパスした人材です。
当然ながら高い専門知識を持っており、専門性があるが故に依頼コストも高めに設定されていることが多いです。
地域でも有力な税理士事務所や、経験・ノウハウ・スキルが豊富な税理士であれば、金額は更に高くなっていくでしょう。
料金プランは事務所ごとに異なりますが、税理士独占業務を依頼する場合はプラスのコストがかかるケースも多いです。
そのため、自社が税理士に何を期待するのかあらかじめ明確にしておく必要があるでしょう。
記帳代行だけを外注したいのであれば、税理士にこだわる必要はありません。
他の依頼先を見つけてコストとパフォーマンスのバランスを取りながら進めることも可能でしょう。
反対に、税理士独占業務を含む専門的なアドバイスも含めて期待するのであれば、多少高くても税理士を活用しない手はありません。
基本的に税理士事務所に仕事を依頼するときは、顧問契約の締結が前提となります。
いわゆる「お抱えの税理士」を持つことになるためいつでもどんな税務関連の話題でも相談でき、いざというときには強いビジネスパートナーとして協力してもらうことができるでしょう。
しかし、毎月顧問契約料を支払う必要があるためランニングコストが高くなるというデメリットが生じます。
「今月だけ記帳代行を依頼したい」というスポットでの依頼がしづらく、「新しい経理担当者の雇い入れができたため契約を解除したい」と思っても契約解除料がかかるなど、フットワークの軽い利用はできないと思っておきましょう。
税理士は、社風や企業理念を含めて自社理解を深めてもらい、長期的なパートナーシップを結びたいときに最適です。
記帳代行のみを依頼したい場合には適切でないケースもあるため、事前によく検討しておきましょう。
税理士事務所は記帳代行だけを専門に扱う業者ではなく、むしろ税理士独占業務をサービスの主軸として据えています。
そのため、他クライアントから緊急性の高い税務相談が入ったときにはそちらを優先することが多く、いつでも一定の記帳スピードが期待できるわけではありません。
記帳業務はルーティンワークとして生じるものであるためある程度のタスク管理はしてくれますが、「必ず毎月〇日までに完成させてほしい」「何よりも自社の記帳業務を優先してほしい」というニーズは通らない可能性があるのです。
そのため、処理スピードを一定にしたいときには向かないかもしれません。
記帳代行だけに特化している業者であれば、「入金から〇日以内に対応」などあらかじめ期限を設けてくれるケースもあるため、参考にしていきましょう。
最後に、税理士以外に記帳代行を任せられる依頼先を紹介します。
税理士に依頼するか他の手段を探すか検討するためにも、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
公認会計士は、証券取引法及び商法に基づいた会計検査を担当できる国家資格保持者です。
会計・監査のスペシャリストでありながら税務やコンサルティングも担当でき、記帳代行を請け負う公認会計士も少なくありません。
税理士と同じく専門家ならではのノウハウを活かし、実務の幅を超えてトータルアドバイスを受けられることが魅力です。
一方、税理士のケースと同様に、顧問契約を締結するのが一般的です。
長期的なビジネスパートナーを探している企業には非常におすすめですが、スポットや短期での記帳代行のみを依頼したい企業には向いていないかもしれません。
記帳代行以外にも悩みや課題を抱えている場合に活用するものとして、イメージしておくのがよいでしょう。
オンラインアシスタントサービスとは、自社の業務を外部のスタッフにオンライン上で委託できるサービスです。
経理のみならず総務・人事・法務・システム・秘書・営業・マーケティングなどさまざまな専門分野ごとに細分化されており、業務の性質に合わせて人材を選定してくれます。
利用期間や業務量に合わせて従量課金されるためパフォーマンス分だけの支払いができるほか、記帳など経理知識のある人材を優先的に紹介してもらえることが魅力だと言えるでしょう。
デメリットは、紹介される人材への教育・指導は自社で実施しなければいけない点にあります。
スキルがあるとはいえ自社独自のフォーマットやルールを理解してもらうまでに時間がかかり、適宜チェックやミスの修正指示を出さなければいけないため、場合によっては付きっきりにならざるを得ないこともあるでしょう。
自社雇用と比較して採用コストは抑えられますが、教育コストは同様にかかるということを承知しておく必要がありそうです。
経理知識や記帳経験のあるフリーランスを探し、業務委託契約を締結して代行してもらう手法です。
相性がいい人が見つかれば長期的なパートナーとして活躍してもらいやすく、業務内容・委託料金も都度ミーティングしながら決められるため、コストパフォーマンスに優れた方法だと言えるでしょう。
しかし、相性のいい人を見つけるまでのハードルが高く、人を見る目が重要だとされています。
会社同士の契約ではないため万が一のトラブルにも弱く、相談先がないこと、情報漏洩やミス・抜け・漏れのフィードバッグに時間がかかりことも難点です。
スキルに見合った報酬相場を設定するスキルがないと、せっかく話が進んでいたのに契約に至らないケースもありますので、ノウハウが求められることにも注意が必要だと言えるでしょう。
記帳代行を専門に請け負う外注業者を活用し、コストパフォーマンスとスピードのバランスを取る方法があります。
短期でのスポット依頼にも長期でのコンスタントな依頼にも対応しており、仕訳の数や業務量に応じて料金が変動するため、使い勝手がよいのが最も大きなメリットです。
また、記帳代行を専門にしているため経理知識が豊富な人材が多く、ミス・抜け・漏れのない確実な仕事や丁寧なダブルチェックを期待できるでしょう。
自社側で検収する手間を削減しやすく、あらかじめ納期を定時してもらえるためスケジュール感を立てやすくなります。
「記帳代行だけを頼みたい!」という場合には、専門業者の手を借りるのがおすすめです。
記帳代行を請け負うために必要な専門資格はなく、税理士以外にお願いしても違法性はありません。
ただし、税務代理業務・税務書類の作成代行・税務相談に限っては税理士独占業務であり、他の人に依頼することはできませんので注意しておきましょう。
記帳代行だけを依頼したい場合は、記帳代行専門の外注業者を使うのがおすすめです。
依頼する業務量に合わせて都度見積もりしてもらえることや、スポットでの依頼・長期での依頼どちらにも対応していることがメリットですので、比較のうえで活用していきましょう。