記帳代行の依頼先は税理士でなくても大丈夫?4つの注意点とは
記帳代行の依頼先は、税理士・記帳代行サービス・オンラインアシスタントなど多数存在します。
税理士は税務に関するプロですが、必ずしも税理士に依頼しなくてもよいことを知っておきましょう。
今回は、税理士以外に依頼する記帳代行について解説します。
他の依頼先を頼る際の注意点にも触れますので、業者選定の際に確認してみましょう。
記帳代行を依頼できる業者
まずは、記帳代行を依頼できる業者をリストアップします。
どんな選択肢があるか知りながら、メリット・デメリットを学んでいきましょう。
税理士事務所
税理士事務所は、記帳代行の代表的な依頼先です。
記帳に関する基本的な知識を必ず保有しているだけでなく、税金に関するプロとして節税対策に関するアドバイスをしてくれることが魅力です。
税理士事務所に依頼する場合、顧問契約を締結します。
どの業務をどの程度任せるかおよその依頼内容によって料金が変動し、毎月固定の顧問契約料を支払うことで記帳を含む各種業務の代行を依頼できます。
公認会計士事務所
公認会計士事務所も、記帳代行を受け付けている士業事務所です。
監査・会計のスペシャリストであり、自社の経営状態や財務状況を可視化するために記帳代行したいときに最適です。
また、公認会計士だけでなく税理士を抱えている事務所も多く、監査・会計だけでなく税務に関するアドバイスをしてもらえることもメリットです。
税理士事務所と同じく、顧問契約の締結が基本です。
毎月定額が発生すること、顧問契約期間を管理しながら都度延長していく必要があることを知っておきましょう。
記帳代行サービス
記帳代行サービスは、記帳代行のみに特化したサービスです。
税務・監査・会計など専門知識に基づくアドバイスは基本的におこなわず、実務のみをスピーディーかつ正確に実行することに長けています。
簿記資格を持つ人や経理部での実務経験年数が長い人が多く在籍しており、記帳に関する細かな指示をせずとも実行してくれることがメリットです。
スポットでの料金プランを設けている記帳代行サービスが多く、依頼する記帳の量に応じて都度金額が変動します。
ランニングコストも安く、必要なときに必要最低限のコストをかけるだけで利用できる手法だと言えるでしょう。
オンラインアシスタントサービス
オンラインアシスタントサービスは、自宅やコワーキングスペースで働く人に経理業務を任せられるサービスです。
経理知識が豊富な人もいれば初心者・未経験者もおり、どんな人材を紹介されるかで作業のクオリティが変化します。
あくまでも人材の紹介のみに特化しているため記帳方法など細かな指導をする必要がありますが、記帳以外の経理業務も依頼できるという点ではメリットがあります。
オンラインアシスタントサービスは、月の稼働予定時間ごとの従量制課金がおこなわれます。
「月に30時間」などあらかじめ予定している労働時間に応じて料金が決まるため、後日過剰な額を請求されることがありません。
やむを得ず残業が発生する場合は1時間単位で追加できることも多く、予算と照らし合わせながら調整できます。
フリーランス
フリーランスは、個人事業主として働いている人に対して記帳を外注する方法です。
スキルが高くコミュニケーション能力にも長けているフリーランスを見つけることができれば、ハイクオリティな作業をしてもらうことができるでしょう。
一方、個人ごとに異なるスキルレベルを正確に知ることが難しく、ミスマッチが起きやすいことに注意が必要です。
フリーランスに依頼する場合の料金プランは、人によりさまざまです。
オンラインアシスタントサービスのように作業完了までの時間を試算して実働ベースの請求になるケースもあれば、記帳代行のようにプロジェクト単位での請求になるケースもあります。
事前に相談しながら自由に決められることが、フリーランスの魅力だと言えるでしょう。
友人・知人
小規模な企業の場合、友人・知人を助っ人として呼んで記帳代行を依頼する場合があります。
既に顔見知りであるため遠慮のないコミュニケーションができることや、都合に合わせてすぐ動いてもらいやすいことが魅力です。
ただし、あくまでも「助っ人」であるためビジネス要素が薄く、業務上の指導がしづらいこともあるでしょう。
お互いに遠慮しあって十分なクオリティが出ないケースもあるため、依頼する相手は十分選定しておくべきです。
報酬は、個人ごとの交渉により決定します。
急ぎで記帳してもらったときには相場以上の金額を支払うなど、プライベートでの信頼関係に影響することがないよう配慮していくことが欠かせません。
税理士以外に記帳代行を依頼するメリット
ここからは、税理士以外に記帳代行を依頼するメリットを紹介します。
あえて税務のプロではなく他の依頼先を選定する理由を知り、役立てていきましょう。
外注コストの削減につながる
前述した依頼先のなかで、特に高額になりやすいのが税理士や公認会計士など士業系事務所です。
国家資格を保有する税務・監査・会計のプロが多数在籍している事務所であるため、当然その専門知識を授けてもらうにはそれなりの金額がかかります。
また、顧問契約を締結することが前提のビジネスモデルも、高額な支払いにつながる要因だと言えるでしょう。
「記帳代行だけ」など単発業務の委託を受けている税理士事務所は少なく、基本的に税務コンサルティングや税務書類の作成をメインに受注します。
記帳代行はあくまでも副産物であり、税務処理に必要な業務の一環として受け付けているに過ぎないことが多いのです。
そのため、ミニマムかつコンパクトな依頼先としては向きません。
膨大な税務処理を一括で依頼する相手として最適であり、そのためには毎月同じ金額を長期的に支払う必要があるのです。
税理士以外に依頼する場合は、必要な分だけ最低限の支払いで済ますことが可能です。
専門家によるアドバイスではなくコストパフォーマンス重視の実働部隊を求めている場合、税理士以外への依頼を考えてよいでしょう。
スポットでの依頼をしやすい
前述の通り、税理士は税務コンサルティングや税務書類の作成を中心に受注します。
会社のビジネスパートナーとして背景や経営理念も理解したうえでのアドバイスをすることが前提であり、長期的な関係性を築くことがポイントとなるでしょう。
そのため、スポットでの依頼には向きません。
「繁忙期のタイミングだけ記帳を代行してほしい」
「この相談だけスポットで受け付けてほしい」
などの要望には対応していない税理士事務所が多いため、あらかじめ注意しておきましょう。
記帳代行などスポットでの依頼に向いている外注先であれば、自社の都合に合わせて頼ることが可能です。
作業のボリュームを見ながら都度料金を変動させてくれるため、コスト面でもメリットが高くなるでしょう。
税理士以外に記帳代行を依頼するときの注意点
ここからは、税理士以外に記帳代行を依頼するときの注意点について解説します。
安いからといって安易に税理士以外の依頼先に飛びつかないよう、あらかじめ気を付けるべき点を知っておきましょう。
税理士独占業務は依頼しない
記帳代行は税理士以外にも依頼できますが、税務関係の業務のなかには税理士にしか依頼できないものがあるため注意が必要です。
税理士以外には依頼できない業務を「税理士独占業務」と呼び、下記3つが当てはまります。
・税務代理業務
・税務書類の作成代行業務
・税務相談業務
税務代理業務は、税務署へ納税申告をしたり税務署からの調査・処分があったときの主張や陳述をする業務です。
窓口・オンラインどちらの申請であっても、自社に雇用されている人以外が担当する場合は必ず税理士に依頼する必要があります。
税務書類の作成代行業務とは、その名の通り税金に関する申告書類や届出書を作成する業務です。
経営層や役員のなかには確定申告を税理士に外注している方も多いかと思いますが、このような確定申告代行も「税務書類の作成代行業務」および「税務代行業務」に当てはまるため注意しておきましょう。
税務相談業務は、税務に関するコンサルティングやアドバイスをする業務です。
節税対策の手法を聞くことはもちろん、税務調査への対応・返答を聞くことも税務相談に当たります。
知り合い同士で一般的な情報交換をするに留まる場合は問題ありませんが、外注費として金銭が発生する場合は税理士として契約できないため要注意です。
クオリティを重視する
税理士などの資格を保有していない人に外注する場合、作業クオリティを最も重視しましょう。
記帳は、決算書や申告書の作成に欠かせない数字処理をする業務です。
ただしい情報に基づいて正確な税金を納めるためにも、自社の財務状況を可視化しながら経営戦略に生かすためにも、まずはミスなく記帳することが重要です。
ときには金融機関に融資の相談をする際にチェックされることもあり、会社の信頼性も左右するため記帳業務の重みがわかります。
万が一記帳にミスや抜け・漏れが多かった場合、納税すべき税額を誤ってしまう可能性が出てきます。
修正申告のために非常に大きな手間と時間がかかるほか、税務調査のときに指摘され悪質な所得隠しがおこなわれていると判断されてしまった場合追徴金や無加算税が課されることもあるため、重大なダメージとなります。
取引先からの信頼も失いかねないため、記帳業務のクオリティには十分注意しておきましょう。
外注先に在籍している人員の経験年数・スキル・実績について詳しく調査し、「ここなら信頼して任せられる」と思える業者を探すことが大切です。
納期や支払いなどのトラブルに注意する
記帳のクオリティが十分でも、納期や支払いなどのトラブルがあると想定していたタイミングでデータを使えなくなってしまうため注意しましょう。
例えば「体調が悪く寝込んでしまったため納期を遅らせてほしい」「当初提示されていた納期のままではこのボリュームを処理することは難しい」など、外注先から要望が届く可能性があります。
話を聞いてやむを得ないと分かっても、必要な時期に必要なデータが揃わないことは自社にとって大きな損失となるため、あらかじめリスクヘッジしておく必要があるでしょう。
個人ではなく会社に依頼し、万が一納期に間に合わなさそうなときは複数人で分担しながら記帳するなど、対策できそうな依頼先を見つけておくことが大切です。
また、支払いに関するトラブルがあった場合、コストパフォーマンスを重視して税理士以外を選定した効果が薄れてしまいます。
当初30時間で完了する予定だった記帳業務に40時間かかり、40時間分の料金を支払わなくてはいけなくなったケースも耳にします。
最初から仕分け量などボリュームに応じて料金設定している依頼先であれば、追加料金が加算されることはありません。選択肢のひとつとして、検討しておきましょう。
依頼先をコロコロ変えないようにする
記帳代行サービスなどスポットで依頼できる外注先の場合、その時々の依頼ボリュームやキャンペーンに合わせて依頼先を都度変更したくなることもあるでしょう。
しかし、依頼先はコロコロ変えず、可能な限りひとつの業者に決めておくことがおすすめです。
依頼先を変える場合、都度入力先のフォーマットや記帳方法について指示しなければいけません。
自社が記帳代行を利用するに至った経緯や依頼先に期待したいことなど、背景も含めて細かなミーティングが必要となり、その分時間と手間が割かれることになるでしょう。
依頼先を1社に決めておけば、細かな打ち合わせをせず依頼したい記帳の内容にのみフォーカスを当ててミーティングすることができます。
依頼先に対して特段の不満や疑問がない場合は継続利用を前提とし、依頼にかかる手間や時間も含めて短縮できれば、業務効率化にも貢献していくでしょう。
まとめ
記帳代行は、税理士以外に依頼することも可能です。
しかし、クオリティ・納期・支払う金額など細かな条件は事前にしっかり確認し、期待通りの効果が得られるよう対策しておく必要があるでしょう。
記帳代行サービスは、税理士と異なりスポットでの依頼や必要最低限のコストだけで記帳代行できる依頼先として知られています。
手間を削減しながら記帳業務を完了させたいときに頼もしい存在となるため、気になる方はチェックしてみましょう。